AGA(男性型脱毛症)の治療は自毛植毛をはじめ、フィナステリドやデュタステリドといった内服薬の服用、そしてミノキシジルを配合した外用薬の塗布といった手段が用意されています。
いずれも医学根拠(エビデンス)に基づいて世界各国で認められている発毛法で、薄毛を克服したいAGA患者にとっては救いの手となる治療法です。
そのような治療法以外で、薄毛の悩みを克服しよう目指している治療法のなかに、低出力レーザー治療というものがあります。
脱毛処理から薄毛処置へ
低出力レーザーは、女性向けの脱毛という増毛や発毛とは真逆の用途で、美容分野において使用されてきました。人体へのレーザー照射といえば、レーザー脱毛が有名です。
医療レーザー脱毛は、黒色のメラニンに反応する波長のレーザーが用いられます。黒い色に当たるとレーザーの光エネルギーは熱に変わるのです。
そのレーザーを除毛したい部分の皮膚に照射すると、毛に当たった部分のみが反応し発熱。
その熱が毛根にある細胞を破壊することで、脱毛処理を行うという仕組みです。
そんなレーザー処置ですが、いまは頭皮に照射することで育毛(発毛?)を促進させるというのです。
低出力レーザー治療とは、赤色のLEDやレーザーを利用した光治療LEDや低出力レーザーの照射を指します。
海外での実験では、赤色ナローバンドLEDの照射が毛乳頭細胞を刺激し、髪を増殖させる物質の分泌を促すことが確かめられていると言います。
参考:Laser Treatment for Hair Loss
https://www.healthline.com/health/laser-treatment-for-hair-loss
研究によると照射されたレーザーが毛根にある髪のメラニンの黒色に反応して熱を発生させることで、頭皮の血行が促進されて、毛母細胞が活性化するといわれています。
一方では毛根を破壊することで脱毛処置をし、もう一方では毛母細胞を活性化させる。
レーザーの種類や出力が違うのでしょうが、なんとも不思議なものです。
レーザー治療の根拠は明確にされていない
低出力レーザーを使用しての薄毛治療ですが、現在では全国各地のクリニックや専用サロンなどで行われています。
それらのWebサイトでは、頭皮の血行促進や細胞の活性化、乱れたヘアサイクルを整えるなど、その効果が説明されています。
市井のサロンや器具の販売を目的とした会社のWebサイトで述べられているだけではなく、専門の医師が経営するクリニックでも同じような内容の説明がされています。
また、日本の皮膚科学会では、毛髪疾患における有用性や治療法をまとめたガイドライン内にフィナステリドやデュタステリド、ミノキシジルとともに低出力レーザーのことも記されています。
参考:日本皮膚科学会ガイドライン
https://www.dermatol.or.jp/uploads/uploads/files/AGA_GL2017.pdf
これによると、
男性型脱毛症に関しましては、655nm低出力レーザーを用いた110名の男性被験者を対象とした観察期間26週間のランダム化試験において、低出力レーザー照射群では照射前に比較して毛髪数は19.8本/cm2増加し、コントロール群(対象赤色光源)では 7.6 本/cm2 減少したとのこと。LEDおよび低出力レーザーの発毛効果に関しては有用性を示す十分な根拠があり、副作用も比較的軽微であることから、適切な機材を使用して行うよう勧めることにする。
と述べられています。ですが、
ただし,上記の機器は国内ではまだ認可されておらず、用いられる光源の種類、波長、出力は報告によって様々ある
とも付記されています。つまり、現在のところその医学根拠は明確ではありません。
アメリカ食品医薬品局(FDA)では…
さらに、米国のFDA(アメリカ食品医薬品局)では一部の商品に510(k)と呼ばれる医療機器に関しての最低条件の認可を受けた器具は見受けられますが、FDA内での最も厳しい試験であるPMA(Approval)を取得している器具はないようです。
510(k)においては、過去に販売されていた機器と同等の安全性や効果があると示すことができれば認可がおりるそうです。つまり、FDAがその効果を確実に保証しているわけではないということです。
参考: low-level laser therapy devices used in the treatment of androgenetic alopecia
https://jhu.pure.elsevier.com/en/publications/shedding-light-on-the-fdas-510k-approvals-process-low-level-laser
まとめ
日本では、施術において低出力レーザーを頭皮に照射することで、毛穴の殺菌や毛根の細胞分裂の活性化に重点をおいた調整が行われています。
現在では育毛サロンや専門のクリニックに加え、家庭内で気軽に実践できるヘルメット型やヘアブラシ型の低出力レーザー照射器具も販売されています。
発毛剤による治療では、その薬剤による副作用も多少ではありますが存在します。
その一方、低出力レーザーによる育毛に関しては重篤な副作用は報告されていないようです。
しかし、作用機序が明確にされておらず、なおかつ効果が出るまでに非常に長い期間を要するとの報告もある同手法は、進行性のAGAにとって有用ではあるかもしれませんが有効打となるかという点については疑問が残ります。
薄毛や抜け毛、とりわけAGAの悩みについては、根深いものがあります。
若くしてAGA由来の薄毛化に悩み、40歳代にして親和クリニック大阪院での自毛植毛により頭髪を取り戻すまでは、私も長年にわたって自分の薄毛に悩み、ハゲ関連のネタでイジられ続けてきました。
わりと手軽にハゲを克服できるのであれば、それに飛びつきたくなる気持ちもよく分かります。分かるからこそ、専門医による自毛植毛や発毛薬の処方など、より確実な手法を選択してもらいたいと私は思います。
投稿者プロフィール
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マスコミ勤務。
植毛手術を機に薄毛役立ち情報サイトを開設。
大阪生まれで阪神とNMB48を愛する40代。
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